遊暮働学 きらくる村
恵庭市の街外れで畑に囲まれた、一見”何もない場所”は、自給自足の暮らしが出来るほど”何でもある場所”でした。
一つのプレハブ小屋から始まった
「きらくる村は小さなプレハブ小屋から始まったんです」と話すのは、遊暮働学(ゆうぼどうがく) きらくる村を運営している かっちん さん。遊暮働学がテーマのきらくる村は、2022年から始まったコミュニティです。きらくる村では毎年20組ほどのファミリーや個人が入村していて、賑わっているご様子。当初は定期的に行われる村人の会やイベント時、この小さなプレハブ小屋にギュウギュウ詰めになりながら集まっていたそうです。今ではプレハブ4個を組合わせた広々とした空間で快適のご様子ですが、こちらのプレハブは思い入れのある大切な”小さなプレハブ小屋”なのだと感じました。
運営者「かっちん」さんとは
かっちんさんは元々幼稚園教諭のお仕事をされていらっしゃいました。結婚後、家庭に入って利用し始めた食材宅配に付いてくる情報誌等で遺伝子組み換え食品や食品添加物の危険性を知ったそうです。多国籍企業のドキュメンタリー映画からも影響を受け、報道されない日本の裏側や世界情勢、環境問題等についても知り、深く考えるようになったと言います。それから数年が経った2019年。子どもたちの為にもこの状況を何とかしたい!と”エコ活動”をスタート。環境問題をテーマにしたイベントや、2021年には「パーマカルチャー研究所」の三栗祐己(みつくりゆうき)さんとご家族を自宅に招いてお話会のイベントも開催されたそうです。三栗さんご一家は、札幌の山奥で自給自足の暮らしを実現ている方で、水道や電気といった公共のライフラインはほぼ使わずに独立した生活を送られていらっしゃるすごい方です!この三栗さんの影響も受けながら、かっちんさんは自給自足や農的暮らしをどんどん実践されて行きます。穏やかな話し方とは裏腹に、行動力があり芯のりある素敵な女性だと感じました。
遊暮働学(ゆうぼどうがく)とは?
- 遊・・・娯楽
- 暮・・・生活
- 働・・・仕事
- 学・・・勉強
”暮らし自体が「遊び」でもあり、「学び」でもあり、「仕事」でもあるから、ただ暮らしていれば暮らしが回る”
※「パーマカルチャー研究所」より引用
村のはじまり
2021年にかっちんさんのご自宅で行った、”三栗さんご一家を招いたお話会”がきっかけでした。お話会に集まった参加者の中で、意気投合したメンバーを中心に結成された畑のコミュニティ『遊暮働学むら』が、きらくる村の原型となっているそうです。1年間、遊暮働学むらのメンバーと、長沼で25年も前から無肥料自然栽培で米、野菜を栽培されている農家さんの畑を拠点に”イチからカレーライス作り”などの自給自足の実験活動された後、2022年から現在の恵庭に拠点を移し、『遊暮働学きらくる村』として本格始動しました。
かっちんさんご夫婦が先祖から受け継いだものの休耕状態だった農地を活用して、自然栽培の畑を始めたり、小さなプレハブ小屋を設置し井戸を整備したりと、徐々に形にして来たそうです。
きらくる村の様子
きらくる村は、恵庭市の街外れの農道を車で走らせることおよそ10分。2階建てのプレハブ小屋が見えて来ます。周りは畑に囲まれており、空を大きく感じることが出来る場所です。無農薬で野菜を育てているようですが、無理をしないで自分たちらしく野菜を育てていて、”ゆるい自然栽培”なんだそう。村では自分の心に素直に過ごすということを大切にしているので、畑作業も希望者が楽しんで取り組んでいるご様子。定期的に集まる、村人さんが1人一品持ちよって一緒に食べる”持ち寄りランチの会”や、収穫した野菜で料理を作って食べることもあり、とても楽しそうです。料理の仕方も原始的で、火おこしをたり、時にはレンガで窯を作ったり…。参加している大人も子どもも一生懸命。だけど楽しい!きらくる村では、現代社会では味わうことのできない、昔ながらの自給自足の生活を体感できる場所です。
きらくる村には公共のインフラは整備されていないので、畑に使う水は井戸水を利用。プレハブ小屋の照明の電力は太陽光パネルで賄っています。トイレはなんと手作りの”コンポストトイレ”です!用を足した後には籾殻を振り掛けて自然の力で土にかえし循環させる。暮らしの知恵に溢れています。
2024年現在、愛らしく個性的な雑種のニワトリ3羽は村の皆の人気者。手作りの”チキントラクター”は可動式で、いつも新鮮な草や虫がいるところへニワトリたちを移動させることが出来ます。食事をしつつ地面に糞を落とすことで土に栄養をお返しします。再び土が肥え、微生物や虫たち、植物たちが元気に育ちますように。きらくる村のあちこで”命の循環”が起こっていました。
畑にはビニールハウスもあり、オクラやトマト、ナスの他、外の畑にはカボチャやサツマイモなどたくさんの種類のお野菜が生き生きと立派に育っていました。驚いたことに、お手製の小さな田んぼもありました。大人も子どもも関係なし。稲刈り作業もやりたい人が協力して収穫です。取材に伺ったときは、収穫した稲わらを天日干しする”はさ掛け”の最中で風情がありました。嬉しいことにビニールハウスで収穫したお野菜を少しわけていただいたのですが、どれも甘くて美味しかったです。自然栽培のお野菜は味が濃くて美味しいものが多いです。来年の為に種取りもして、きらくる村の土に合った元気で美味しいお野菜が育つのが楽しみですね。
友産友消(ともさんともしょう)とは?
仲間の中で経済が回る。きらくる村がきっかけで事業を始められた方がいらっしゃいます。女子高校生が自分で考えたレシピでお菓子を作って販売する「タルト屋ゆきのした」さんもその一人。”自分のできることは何かを考え、それを商品化してお金をいただく”。最初はみんな自信が無くて、こんなことでお金をもらってもいいの?と思いがちです。もちろん実績もありません。でもきらくる村の考え方は”遊暮働学”。趣味や特技、普段の生活が仕事になり暮らしが回る。村人さんたちはそんな仲間を応援し、支えながら背中を押してくれる心強い味方です。タルト屋ゆきのしたさんは、きらくる村の不定期イベント「きらくるSHOW店」で出店した際、商品コンセプトやレシピをいちから自分で考え、売価を決めたそうです。そうやって完成した商品が売れた時の喜びはひとしおだったと思います。「自分が考えたレシピで、それを買ってもらえて、美味しいって食べてもらえて、お金ももらえるって嬉しい。そうやって経済が回ったらいいよね」と話していたそうです。そして現在は実際にお店をOPENされています。とても素敵なお話です!
タルト屋ゆきのした
きらくる村のイベントがきっかけでお店をOPENしたヴィーガンのお菓子屋さん。不定期でイベント出店しています。米粉を使ったタルトは砂糖も不使用。ココア風味の生地が優しい味わい。見た目も可愛らしい一品です。Instagram:https://www.instagram.com/tarutoya_yukinoshita/
ありのままの自分でいられるみんなの居場所
村人さんの中には、周りの人に気をつかってしまう繊細さんや、人混みが苦手な人、学校が苦手な子どもたちもいるようです。運営者のかっちんさんもその一人。頑張らなくていい、自然体でいられる場所を提供しています。心が持続可能では無い現代社会の疲れを癒せる場所です。だからきらくる村では”好きな時に来て自由な時間を過ごしてほしい”と村人さんに村を開放しています。都会の中や人混みに疲れたら、郊外の畑の真ん中にあるきらくる村でボーっとしたり、アーシングやヨガをして身体にたまっている電磁波や毒素を排出したり、遊んだり…。
優しい村人さんたちがたくさんいて、遊びながらの農作業や昔ながらの料理作りを体験しているうちに自然とパワーをもらい元気になれる場所です。不登校の子どもが学校へ行けるようになったこともありました。きらくる村は、現代社会で疲れ切った私たちを癒してくれる仲間がいる。そんな尊いコミュニティだと感じました。
藍染めに使う植物:蓼藍(だてあい)
「自然に生えている草木の価値を知り、人間も自然の一部であることを感じてほしい」と草木染を行っているそうです。
遊暮働学 きらくる村
ゆうぼどうがく きらくるむら
- 所在地:恵庭市
- HP:https://kirakuru22.com/
- Instagram:https://www.instagram.com/kirakuru_mura_eniwa/