株式会社はなゆき農場
十勝の足寄町でオーガニック牛の繁殖・肥育に取り組む農家さんをご紹介します!
はなゆき農場は北十勝ファームの『有機牛生産部門』
株式会社はなゆき農場は、北十勝ファーム有限会社の有機畜産部門として、2018年2月に設立されました。代表を務めるのは中村さんです。人一倍の働き者で、牛が大好き!そして、いつも笑顔で穏やかにお話をされるのが印象的な女性です。
北十勝ファームでは主に、和牛の一品種「日本短角種(以下短角牛)」の繁殖・肥育から、流通まで行っている畜産農家です。現在の飼育頭数は約600頭。2024年2月時点での短角牛の飼育頭数は約6,200頭ですから、その数の多さに驚きます。短角牛約600頭の内、一部をはなゆき農場で飼育、有機JAS認証牛となっていきます。
北十勝ファーム有限会社代表の上田さんは長年畜産に携わり、常に新しいことを追求し、妥協しない農業を続けて来られました。有機JAS認証や動物福祉のアニマルウェルフェアにも早い段階から取り組みを始めています。
動物になるべくストレスを与えたくないと考える中村さんは、牛が病気で治療が必要な場合でも極力注射を打たないように努めているそうです。そんな優しさが笑顔と話し方から伝わってきます。
有機JAS認証取得までの道のり
有機JAS認証付きの牛が出荷できるまで、一体どのくらいの期間が必要になるかご存知でしょうか?3年4年?いいえ、なんと7年です!人に例えるなら、生まれた赤ちゃんが小学校で入学式を迎えられる程の年月です。とても長い道のりです。
北十勝ファームでは2017年から、有機牛生産に向けて動き出しました。その長い道のりを順を追って説明します。
- 有機牛を放牧するための有機ほ場の準備:約3年
- 自然交配~出産(母牛は出産前6か月以上有機飼育):1年~1年半
- 生まれた有機牛の肥育:2年~3年
有機牛の飼育には、有機ほ場が必要になります。その為、まずはほ場を準備するところからスタートです。使用が禁止されている化学処理された肥料や農薬の散布を止め、有機肥料等に切り替え土づくりに励みます。3年後、有機ほ場の準備ができたら、次は有機牛を出産する母牛の準備です。まずは種牛と一緒に放牧し、自然交配で種付けしてもらいます。無事に妊娠した母牛は出産前6か月以上は有機牛と同じ飼育方法にしなければなりません。その後出産。有機牛になる子牛が生まれた!その時点で約4年が経過しています。その後有機JAS法に則り、毎日牛の状態を確認しながら育てていきます。これがなかなか大変なことで、バインダー片手に、放牧地へ入り、一頭一頭確認して記録を付けていきます。生まれたばかりの子牛は、母牛が牧草や木の陰に隠してしまうことがあるそうで、探すのに2時間以上かかってしまうこともあったそうです。そして離乳~育成~肥育の段階を経て、2年4か月頃出荷されて行きます。有機農産物が出来るまで3年はかかると言われますが、更に4年追加の約7年もかかるので大変な道のりですね。
実は有機JAS認証牛生産にあたり、陰で支えてくださった企業があったそうです。昨年2023年に、サステナアワード2023伝えたい日本の“サステナブル” で農林水産大臣賞を獲得し話題になりました。『畜産の未来を育む産直はなゆき農場有機牛』。コープデリ生活協同組合連合会さんが、先に子牛を買い取り、その後預託という形で毎月管理料を受け取りながら育てているそうです。思い切って有機牛にチャレンジすることができたのは、コープデリさんの協力があってこそだったのですね。
循環型農業への取り組み
SDGsやみどりの食料システムなどで注目が集まる循環型農業ですが、北十勝ファームでの取り組みをご紹介します。
牛が食べるエサについて、ほとんどを北海道産の飼料で賄っています。飼料は粗飼料と濃厚飼料に分けられます。粗飼料とは牧草や稲わら、青刈りデントコーンなどで78%が国産で流通しています。濃厚飼料は穀類のトウモロコシや糟糖類・かす類のビートパルプや油かすなどで、国産はわずか13%。残りの87%を海外からの輸入に頼っています。※1これを道内、国内から仕入れることで輸送時にかかるCO2削減に貢献しています。また、ビートパルプや油かすは食品工場で出る副産物なので、フードロスにも貢献しています。
※1参考資料:農林水産省飼料をめぐる情勢より
牛の排泄物について、牧場の敷地内にある施設で完熟たい肥にしています。そこでできた堆肥を牛の飼料を栽培する畑やほ場に有機肥料として利用し循環させています。また、地球温暖化の原因物質の一つ、農耕地土壌から発生する亜酸化窒素(N2O)の研究で、牛糞堆肥からの N2O 発生量は化学肥料(尿素)よりも小さい傾向にあるようなので、地球環境にも優しい農業となっています。
短角牛の飼育方法について、夏山冬里(なつやまふゆさと)といわれる飼い方をしています。これは、雪が溶け牧草が生え揃う頃から山(放牧地)へ放し、霜が降り牧草が枯れる頃に里(牛舎)へ下す飼育方法です。その為、寒い北国に向いたの飼育方法として注目されています。放牧地ではのびのびと過ごしながら生えている牧草をエサとし、排出した糞はそのまま土へかえり土壌を肥やします。そしてその肥えた土からたくさんの牧草が育ち、牛たちのエサになるという自然のサイクルの中で大きく成長していきます。粗飼料率の高い(牧草や稲わらで大きく育つ)短角牛ならではの飼育方法と言えるでしょう。
女性が活躍する農場
はなゆき農場は女性スタッフがメインで仕事をしています。短角牛は黒毛和牛よりも大き育つと言われ、大人の雄牛で800kgを超えることも珍しくありません。種牛に関しては、1t を超えるなどとても大きく力も強いです。そんな牛たちの中で、朝早くから夜遅くまで仕事をこなすたくましい女性スタッフ達。穏やかな性格と言われる短角牛は、子牛の頃から愛情をもって接していることもあり、とても人に懐いています。牧場スタッフの案内で一緒に放牧地の中に入り、牛たちと触れ合うとこができました。普段から牛たちを大切にしている中村さんが放牧地へ入ると、牛たちは皆、中村さんの後を付いて来るのがとても印象的でした。大自然の中で牛たちに囲まれる姿はとても輝いて見えます。
株式会社はなゆき農場
かぶしきがいしゃはなゆきのうじょう
- 所在地:北海道足寄郡足寄町
- 栽培方法:有機牛(2023年~)
- 品種:日本短角種(短角牛)
- HP:http://kitatokachi-farm.co.jp/
- 一部地域のコープデリ連合会でご購入いただけます
- 有機牛商品の購入先:https://goldear.base.shop/categories/5688050
北十勝ファーム有限会社の有機牛生産部門です